SEOHYO《Kaleidoscopic Flare / Cubed Landscape》

SEOHYO《Kaleidoscopic Flare / Cubed Landscape》

『Kaleidoscopic Flare』は、パーリンノイズアルゴリズムを通じて有機的に躍動する四角形が、対称を繰り返し、無限に増殖していくジェネレーティブアート作品です。本作品は、中央の4つの面から構成される立方体が持つ構造的特性を最大限に活かし、パターンが中央部から隣接する2つの立方体へと視覚的領域を精巧に拡張していきます。この過程を通じて具現化された重層的な空間の中で、鑑賞者はまるで巨大なデジタル万華鏡の内部を直接覗き込んでいるかのような体験をすることになります。作品の中で絶えず変奏される四角形の軌跡は、対称の原理を借りて、予期せぬ新しい形態を刻一刻と休むことなく生み出していきます。このようなアルゴリズムの動きは、私たちが足を踏み入れている都市が持つ「偶然性を伴う絶え間ない変化」というダイナミックな流れと密接に軌を一にしています。秩序立った数学的規則の中で花開くこれらの不規則な形状は、私たちに馴染み深い幾何学的単位が複雑に絡み合い、反射し合うことで生み出す、見知らぬ美しさを見せてくれます。アルゴリズムが設計した秩序と偶然が交差して生み出すこのデジタル風景が、日常の境界を越えた新たな視覚的体験をもたらし、それぞれの心の中に小さな芸術的発見の起点として残ることを願っています。

『Cubed Landscape』は、自然から着想を得て作成されたアルゴリズムを、多摩川の生態的要素によって再解釈し、新たな物理的構造の中でアレンジして組み合わせた連作です。今回の作品は、キューブと中央の4つに分かれた窓のような独特な構造的特性に合わせて、既存の視覚的言語を再配置することで、正面から見た際に3つの窓を通して一定の方向へ流れ、巨大なパノラマへとつながる構成をとっています。スクリーンの物理的な境界を越えて有機的につながるこの流れは、観覧者に深く広い視覚的拡張性を提示し、馴染み深い都心の中に新たな「自然の窓」を開く試みとなります。作品を構成する多摩川の鳥や魚、草や虫を連想させる要素は、既存の断片化されたイメージを一つに織りなす過程を通じて、新たな生命力を得ます。断片化された画面が集まり、一つの巨大な生態的風景を完成させていくこの過程は、私たちが直面してきた自然の断片を、再びつながった世界として捉え直すことを促します。

アーティストインタビュー

2026年8月19日、東京・二子玉川。玉川高島屋S.C.南館ファサードに設置されたLEDキューブの前で、韓国のジェネラティブアーティスト、SEOに話を聞いた。SEOがこのキューブに向けて制作した《Kaleidoscopic Flare》《Cubed Landscape》は、万華鏡と窓という2つの発想から生まれた映像作品である。このLEDキューブは、2025年3月の外観リニューアルに合わせて設置された3台の大型ディスプレイで、最大6メートル四方の画面に「街と呼応するキューブ」をコンセプトとした映像を映し出している。建築全体の設計はNOIZが手がけ、メインの画面は4つに分割されている。SEOはパンデミックの時期に毎日コードを書いて作品を上げることから活動を始め、いまは韓国、シンガポール、オランダ、アメリカと、各地のパブリックスクリーンで作品を発表している。ただし、このキューブを実際に目にしたのは、この取材の日が初めてだった。なぜ万華鏡と窓だったのか。4つに分かれた画面、ソウル郊外の街との共通点、そして都市の規則とジェネラティブアートの関係。世界のスクリーンを見てきたSEOが、初めてこの場所に立ったとき、何を見たのか。電車の音と、ビルの間を抜ける風のなかを歩きながら聞いた。

毎日のコードから、世界のスクリーンへ

取材は、SEOの自己紹介から始まった。

「韓国のジェネラティブアーティスト、SEOです。パンデミックの時期に、毎日コードを書いて作品を投稿したことをきっかけに活動を始め、いまは世界各地のパブリックスクリーンを使って作品を発表しています」

発表の場は韓国からシンガポール、オランダ、アメリカへと広がっている。近年は日本で作品を発表する機会も増え、渋谷をはじめ、NEORTが関わる展示にも参加してきた。

「日本では、いろいろな形をしたLEDスクリーンが増えていますよね。そういうものを見ると、自分でも挑戦してみたいと思って、いろいろ取り組んでいます」

4つに分かれた画面から

6メートル四方のキューブを見上げながら、まず話題になったのは、このスクリーンの成り立ちだった。街なかにある大型LEDの多くは、広告を表示する設備として、完成した建物に後から取り付けられる。SEOは、この場所との違いをそこに見ている。

「基本的に、ビルがLEDスクリーンを持つ理由は、収益を上げるためというケースが多いですよね。いろいろな広告や映像を流せるように、汎用的な四角い画面になっていて、建物が完成したあとに取り付けられたように見えるものも多い。でも、ここのニコタマのLEDは、最初に見たときからキューブの形になっていること自体が面白かったし、メインのスクリーンが4つに分かれていることにも惹かれました。いつか声をかけてもらえたらいいな、と勝手に想像しながら、どんな作品が合うだろうと考えたこともありました」

実際にその場に立って、初めて気づいたこともあった。エレベーターのガラスを支える線材や、階段まわりに組み込まれた立方体の構造。それらが、自分の映像に使っている図形と地続きに見えたという。

「映像で見ていたときは、そこまで気づいていなかったんです。でも今回来てみたら、向こうにあるキューブだけではなくて、エレベーターのガラスを支えている線なども、私が作品のなかで使っている四角形や線につながっているように見えました。ジェネラティブアートを見せるときに、スクリーンだけが独立した作品に見えるのではなく、建物と一緒に同じ声を出しているような感じがする。それが、すごく面白いポイントだと気づきました」

SEOの制作は、スクリーンを単なる巨大な画面として扱わないところから始まる。日本で最初に手がけた渋谷MODIのスクリーンでも、建物を特徴づける柱を映像の構成に取り込んだ。

「作品を作るときに大事にしているのは、LEDスクリーンを大きなテレビだと思わないことです。まず建築の一部として存在していて、その部分だけが柔軟に変化できる。そのことが建築にどんな自由を与えられるのか、どんな面白い出来事を生み出せるのかを考えています。日本で最初に作品を発表した渋谷MODIのスクリーンにも、建物の特徴になっている柱があったので、映像を作るときにその柱を構成のなかに取り込み、建築と一緒に見えるようにすることを意識していました」

万華鏡と、窓

4つに分割された画面という条件から、2つのアイデアが生まれた。ひとつは、韓国の小学校の美術の授業の記憶につながっている。

「韓国では、小学校の美術の時間に、インクなどを使って、折ったり反射させたりしながら模様を作る授業がありました。このスクリーンを見たときにも、そういうふうに折れたり反射したりするものに見えたので、カレイドスコープ、つまり万華鏡のような発想で、ひとつのイメージが反射を重ねながら広がっていく作品を作りました。ここには3つのキューブがあるので、真ん中から広がっていく動きが両側にも影響を与えていくようなイメージです」

もうひとつは、同じ4分割の画面を「窓」として捉えたところから始まった。玉川という土地について調べるなかで知った自然環境の存在が、そこに重なった。

「4つに分かれた面が、一枚のガラスに十字の桟を入れた窓のようにも見えました。それで、この窓を通して何が見えるだろうと考えたんです。玉川という場所を調べてみると、豊かな自然環境があることもわかったので、それも作品に入れてみたいと思いました。鳥が飛んでいく画面や、川の中を魚が泳ぐ動き、川辺で植物が育っていくイメージなどを考えて作った作品です」

2つのシリーズでは、周囲の街との関係のつくり方も対照的である。

「建物やスクリーンだけではなく、周辺の環境との関係も考えました。最初の作品は、周囲に少しエネルギーを与えていくもの。2つ目は逆に、周囲の環境を作品のなかに持ってくるようなものです。街とこのLEDがどうやって一緒に生きていけるのか、ということも考えました」

二子玉川という街について、SEOはソウル周辺の風景を引き合いに出した。日本にはこれまで100回ほど来ているが、この街を訪れるのは初めてだという。

「都市のなかにありながら、どこか郊外のような雰囲気もあって、豊かな自然があるという点では、ソウルにも似た場所があります。たとえば街の中心にある清渓川は小さいけれど水が流れていて、周囲のビルと自然が一緒に存在しています。それから、ミサというエリアもあります。オリンピックの競技場があったり、家族で遊びに行ったりする場所なんですが、スターフィールドという大きなショッピングモールもある。自然があって、スポーツがあって、ショッピングモールがあって、家族や文化がある。そういうエネルギーは、少し似ているのかなと思いました」

待たなくていいスクリーン

街なかのスクリーンで作品を発表するとき、作家はしばしば広告の合間を待つことになる。数十秒だけ作品が流れる瞬間を狙って撮影する。SEOもこれまで、何度もそうした経験をしてきた。

「普段、ほかの国の都市で作品を見せるときは、とにかく待つ時間が長いんです。広告の比率が高いので、それが全部終わって、自分の作品が1分とか30秒だけ出る瞬間を待って撮影することが多かった。でも、ここでは作品がずっと流れているので、立ち止まってゆっくり見ることができる。いろいろな場所で『都市の中のアートギャラリー』のような言葉を掲げてアート作品を流していますが、実際には全然ギャラリーのように見られなくて、『早く見てください』という感じになってしまうことも多いんです」

この場所では、見る位置も固定されていない。取材はキューブの真下から始まり、エスカレーターで階を上がり、向かいの広場まで移動しながら続いた。

「普通の四角いスクリーンだと、見るポジションがだいたい決まっていて、場所を変えても見え方はそれほど変わらないことが多い。でも、ここでは下から見たり、階を移動しながら見たり、近づいて見たり、上からも下からも見ることができるので、見え方がまったく変わります。歩きながら彫刻を鑑賞しているような感覚があって、新しいタイプのギャラリーにいるような感じがします」

スクリーンが比較的低い位置にあり、周囲の木々と同じ視界に収まることにも触れた。街なかの大型ディスプレイは、多くの場合、建物の高い位置にある。

「ここでは木とスクリーンが一緒に見えるのも、すごく素敵だと思いました。大型スクリーンはかなり高い位置にあることが多いので、木や自然と一緒に見える場面を作るのは難しい。でも、ここではいろいろなものが同時に視界に入ってきます」

画面に近づくと、遠くからひとつのイメージとして見えていた映像がほどけ、線やドットに戻っていく。

「ジェネラティブアートは、近くから見るか、遠くから見るかで見え方が変わりますよね。たとえばピクセルも、すごく拡大すればただの四角形なのに、遠くから見ると人物や何かのイメージに見える。向こうから見ていたときは鳥のように見えたものが、ここまで近づくと、ただ線が動いているように見える。見方がまったく変わるところが、すごく面白いと思います」

近づくことで露わになるLEDのピクセルについて、SEOは「それ自体が新しいテクスチャーにも見えます」と話した。

街の規則が、外に出る

ジェネラティブアートと都市の相性について、SEOは「ルール」という言葉で説明した。作品の側も、街の側も、一定の規則にしたがって動いている。

「ジェネラティブアートは、規則やルールを作ることが中心にあるアートだと思っています。一方で、都市も基本的にはルールによって動いていますよね。赤信号では渡らない、青信号になったら渡る、といったルールによって、みんなが動いている。そこにジェネラティブアートが入ると、ただ絵を見せるのではなくて、この街がもともと持っている規則を外側に引き出して、見えるものにしてくれる。それがジェネラティブアートの面白さだと思います」

取材のあいだも、大通りを絶えず風が抜けていた。車の流れがあり、信号に合わせて人が渡り、その間を風が通り抜けていく。

「特にこの多摩川の近くでは、全体を見ていると、まず車が動いていて、それとは違うリズムで人が信号を渡っています。さらに、この大きな通りを風が抜けていく。見ている映像の動きと、自分の皮膚に当たる風の強さや感触が、この四角いスクリーンと一緒につながっていく感じがするんです。ひょっとしたら、本当にジェネラティブアートを見るための、すごくいい場所なのかもしれないですね」

「知っていたら、ちょっと変えたなと思いました」

SEOが実際にこの場所を訪れようと決めたきっかけは、夜に撮影されたキューブの映像だったという。

「夜に撮った映像を見て、『あ、これは行かなきゃ』と思いました」

上階まで上がると電車が通り、向かいのビルのガラスにはキューブの映像が反射していた。横から見ると、「窓」として設計した正面の画面と隣り合う面が、同時に視界へ入ってくる。

「もし作品を作る前にここへ来ていたら、全然違う作品ができていたと思います。窓のアイデアでは、窓がつながっているように見えることを考えて作っていたんですが、横から見ると隣の面まで一緒に見えて、それが見え方に影響を与えるということには、作っているときには気づいていませんでした。それを知っていたら、ちょっと変えたなと思います」

そして、こう続けた。

「写真だけではわからない建築ですよね。体験する建築だと思います」

広場からキューブを見下ろす位置に立つと、画面だけでなく、その下を行き交う人や周囲の建物までがひとつの視界に収まる。

「物も見えて、人も見えて、全部が一緒に見えますね。スクリーンって、いつもこういう気持ちで、みんなを見ているのかもしれないですね」

アーティストseohyo
Space玉川高島屋S.C. LEDキューブ
期間
2026.4.3 0:0:0
-
2026.8.31 13:0:0

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